Sunday, 6 May 2012

サハラ砂漠

「サハラ砂漠は、見渡すかぎり一様な砂しか見せてはくれない。もっと正確に言えば、砂丘は数少ないから、小石まじりの砂州のようなものしか見せてはくれない。そこではたえず、倦怠の諸条件そのもののなかに浸されてしまう。ところが、眼に見えない神々が、方向と傾斜と予兆との網目、秘かな生きた筋肉組織をつくりあげているのだ。もはや一様性などは存在しない。すべてが方向づけられている。一つの沈黙ですら他の一般の沈黙とは似ていないのである。」

サン=テグジュペリ『ある人質への手紙』(山崎庸一郎訳、みすず書房、168ページ)