Monday 21 March 2011

『哲学への権利』の5冊

西山雄二『哲学への権利』(勁草書房)の刊行記念ブックフェアが各地で開催されていますが、その小冊子「思考と抵抗の力を手放さないために 人文学の担い手14人が選ぶ128冊」のためにぼくが選んだ5冊は以下のとおりでした。遅ればせながら、短いコメントつきでここにも掲載しておきます。小冊子は開催書店で配布しているはずです。


『哲学への権利』関連ブックリスト

ヘンリー・デヴィッド・ソロー
『森の生活 ウォールデン』
飯田実訳、岩波文庫

生活の全般的見直しにつながらない哲学は単なるおしゃべりにすぎない。都市環境の専制を逃れて森に行くのは苛酷な道だ。しかしその実践にも偉大な先行者がいる。ヒトの種社会を、国家を、相対化する指針。

ジル・ドゥルーズ
『記号と事件 1972-1990年の対話』
宮林寛訳、河出文庫

哲学知らずのぼくに何がいえるわけでもないが、「一体あなたはなぜそんなことを考えるのか」という驚きを人に与えるのが哲学者たちの大きな役目だとすれば、彼の右に出る者はいない。翻訳がすばらしい。

イヴァン・イリイチ
『生きる希望』
臼井隆一郎訳、藤原書店

われわれが生きる「世界化された世界」のあらゆるシステムを根源的に批判しつづけたこの故郷喪失者の思想の大きさと急進性は、ヨーロッパに自足するあらゆる哲学を笑い飛ばすだろう。忘れてはいけない足跡だ。

アルフォンソ・リンギス
『信頼』
岩本正恵訳、青土社

どこへでも行く、ひとりで行く、そして考える、読む、写真を撮る。そうしながらみずからをさらしてゆく。レヴィナス、メルロ=ポンティ、バタイユらを沈黙の対話相手としながら。これが哲学者の旅なのか。

エリック・ホッファー
『エリック・ホッファー自伝』
中本義彦訳、作品社

われわれの思想的弱さは「学校に通ったから考えるようになった者」の弱さだ。仕事と放浪により考えることへと追い込まれていった者の思想には、まったく別の手触りが生じる。しかも彼は一時期盲目だった!