イラストレーターで民俗研究家の遠藤ケイ氏の作品を20余年来愛読しているが、今年の新刊『海の道、山の道』(筑摩書房)を読んでいて、あっと思ったこと。
氏によると、トカラ列島の悪石島では「ヤブレコブレ」というと「無縁仏」をさすそうだ。
それを知って、ピンときた。いま、「やぶれかぶれ」とは自暴自棄と似た意味で使われる。これはもともと「藪霊、川辺霊」とでもいった言葉から派生したのではないだろうか? つまり、家族や親族に葬られることなく、藪に捨てられ、河原に捨てられた死人のこと。
ここから転じて、「もうどうなってもいい、行き倒れてもいい、とことんやってやる」といった意味をこめて使われるようになった表現が「やぶれかぶれ」ではないかと思うのだが、どうだろう。
その当否はともかく、人間、やぶれかぶれで行こうという気持ちにならないうちは何にもできないということだけは、改めて自分に言い聞かせよう。