Friday, 18 September 2009

最終氷期埋没林への旅

国際芸術センター青森での合宿、終了。充実の4日間だった。

青森公立大学のロケーションは最高、キャンパスは疑いなく日本でもっとも恵まれた環境にある。森を散策しながら、きれいな宿舎に泊まり、このうえない設備を備えたスタジオでの作業。期間が短すぎた、またたくまに過ぎた。次回は1週間は滞在したいもの。

初日、まず八戸近郊の種差海岸を歩く。スコットランドを思わせる典型的なリンクスランドの風景が珍しい。それから青森入りし、夜はアーティスト佐々木愛さんによるワークショップ。初日の課題は、なんと刺繍! クロススティッチなんて、やったのは小学校のころか? しかし楽しめた。

2日目、八甲田山大岳への登山。酢ヶ湯温泉の先に車を停めて登り始める。前日の強い雨でかなりぬかるむ小道を行き、高度とともに気分も高揚。やがて石がごろごろする硫黄臭の谷間をわたり、美しい湿原を横切るころには爽快そのものの気分に。最後の山頂へのアプローチ部分は傾斜もきつかったが、ナンバ歩きの応用(?)で難なくこなす。頂上は標高1584メートル。

ところが寒い山頂で震えていると、いきなりものすごい速度(たぶん時速にしたら10キロくらい?)で雲が襲いかかってきて、たちまち視界は数メートルに。恐れをなして、お弁当をひろげることもせず、下山にかかる。一部の者が大幅に遅れてハラハラしたが、ともかく無事生還。雪中行軍で有名な八甲田だけど、冬にはとても一歩も足を踏み入れられないだろう。しかし、冬のその姿を見てみたい気もする。

夜は銅版画(ドライ・ポイント)の制作。これも高校以来、30数年ぶりの体験。新鮮で、驚きがあって、発見があった。みんな愛ちゃん先生の生徒となって、謎めいた絵を描き、刷った。

3日目、朝地図を見ていて発見した「最終氷期埋没林」が気になって気になって、突然出発して日本海側へ。2万5000年前の森林がおそらく氷河期の洪水に埋もれ、炭化し、海岸で露出している。大きな喚起力のある風景。そこからベンセ湿原を歩き、十三湖をぐるりと回って帰る。この日はワークショップは学生たちにまかせ、ぼくは夕食当番、鶏肉と茄子のカレーを作る。

夜、深夜の森を散歩。そして国際芸術センターの完璧な音響のアンフィシアターで、順番に歌をうたう。おもしろかった。

そして4日目、午前中に制作物の発表会をすませたあと、ふたたび八戸。八戸市美術館で露口啓二さんのすばらしい写真の大規模な展示、吉増剛造さんや同僚の倉石さんの映像作品を見る。会場では吉成くん発行の「アフンルパル通信」バックナンバーの販売も。これはうれしい。

それから美術館のある本八戸から新幹線の駅のある八戸まで、たぶん7キロくらいを歩いて戻る。馬淵川をわたる根城大橋が、この行程ではいちばんよかった。

夜、8時半すぎに東京に。ワークショップを指導してくれた佐々木愛さん、自費参加で、歩くことに関して真剣な考え方の道をしめしてくれた英文学者のダニエラ加藤さん、そして全体のコーディネートをしてくれた宇野澤昌樹くん、お世話になった国際芸術センター青森のスタッフのみなさん、ありがとうございました。

参加した8名の学生のみんなには、強烈な経験だったはず。やりたいことの数分の一しかできなかったけれど、新たな覚醒を次の糸につなげよう。来週からの秋の学期も、しっかりやろう!