2009年9月4日金曜日

清里で

清里での最後の、そして最大の衝撃は、清里フォトアートミュージアムでの久保田博二の作品。

アジア各地で撮影された写真が、ダイ・トランスファーという手法でプリントされている。

http://en.wikipedia.org/wiki/Dye-transfer_process

1940年代にコダックが開発したこの手法、簡単にいうと3原色に分けた色を、それぞれ色素を吸収するフィルムに担わせて、版画を重ね刷りするように何度も重ねてプリントする、というもの。

美しい。これまでに開発されたすべての写真技術の中で、もっとも幅広くまた微細な色の差異を表現できる。その場で上映されていた、プリント現場のビデオが壮絶。インド人の、ああ名前が思い出せないけどみのもんたに似た名前の人が、自由自在に色を調整してゆく。その結果は、思わず身震いするほどの美しさだ。

そしてこの手法、今年、終わりを告げた。断腸の思いというほかはない。どれほどすぐれた手法でも、かけがえのない技術でも、あるとき終わりが来るのか、来ずにはいないのか。

ポラロイドも終わり、ダイ・トランスファーも終わった。人が経験する画像は、いまもどんどん変貌している。仕方がないことではあるだろうが、無くすにはあまりに惜しいものも無くなっていく。さびしさ。

ところでこのフォトミュージアム、はじめて行ったけど、すばらしい場所だ。建築がいい、環境がいい。宿泊施設もレストランも、もう営業を止めている。もったいない。この宿泊施設を、たとえば、あまり売れないけどやる気は十分の作家たちのリトリートとして開放できないものか。あるいはベルギーのどこかのお城でやってるみたいな、翻訳者たちの合同キャンプとして。

きっと創作力が爆発する場所が、実現できるにちがいないのに。もったいないなあ。じつにもったいない。