週末はリービ英雄をめぐるドキュメンタリー映画『異境の中の故郷』(大川景子監督)のひさびさの上映会でした。18日(土)は名古屋市立大学。19日(日)は金沢のオヨヨ書林せせらぎ通り店。
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いずれも熱心なお客さんに恵まれ、終了後のトーク(監督、温又柔、ぼく。名古屋では土屋勝彦さんも加わる)も毎回ちがう内容で、新しい何かを指摘できたと思います。
オーディエンスからの質問も、いつも貴重な指摘が多いのですが、ときどき勘違いされたままに終わったなと思うこともあります。たとえばリービさんはなぜ日本語を創作言語として選んだのか、という質問。これに対しては、中国語の専門家であった父親が日本語を軽んじていたため、あえて、といったエディプス的説明を、ついしてしまいました。すると当然ながら「それでわかった」という反応が得られます。しかし、その程度の説明でわかることなんて何の意味もないのだ、という部分までは伝わらない。その説明がまちがっているわけではないのですが、そんなストーリーでは、なぜあれだけの努力と時間を費やして日本語で書き続けるのかという謎の、ごく表面にふれただけにとどまります。
謎を謎だとはっきり呼ぶようにしなくてはならない、安易な説明や解釈は邪魔なだけ。そうした手触りを、むしろはっきり述べる努力をしなくてはならないのかと反省しました。
リービ英雄の文学を語る上で絶対に欠かせない、極端なまでにゆたかな映画であることは疑いの余地がありません。毎回、何か新しい発見がある。ということは毎回、必ず上映後のディスカッションを、深みに光がさすまでやらなくてはならない。
まだ見ていない、ぜひ見たいという人が多いため、東京でも近日中に上映会を企画します。ご期待ください。