Sunday 2 August 2009

古いともだちに電話

ともだちのAが、Bに行くことになった。
Bという土地の名はよく知っている、古いともだちのCが住んでいるから。
Cは30年前、20歳のころの親友だ。
ぼくはBに行ったことがない。
Cに電話をかけてみた。
ああ、C? ひさしぶり。元気?
なんとかやってるよ、とCがいった。30年になるなあ、そろそろ。どうして電話をくれなかったんだ?
ごめん、ごめん、なんか忙しくてさ、いろいろ。人生が。あのさ、Aっていうやつがいてね、こっちのともだちで。
そう?
そう。それで、そいつがこんどBに行くんだよ。ていうか、もう行ってる。
そう?
そう。それで、そいつに会って、そっちのようすや生活を、教えてやってくれないかな。
ああ、いいよ。よろこんで。明日の朝にでも、会ってみるよ。
ありがとう、C。きみにも会いたいよ、また。そのうち会わなくちゃ。
ああ。いつでもいいよ、来てくれるなら。こっちからは行けないからなあ。
そうだね。じゃあ、Aをよろしく。
ああ、心配しなくていいよ。すぐ親しくなるから。Aはおまえのともだちだろ? だったら、すでにおれのともだちだよ。
うん。じゃあ、また。ありがとう。
うん、また会おう、いつか。

ぼくは電話を切った。Aは、もうBに着いている。その電話は、一度だけ、かけることが許されている電話。
Cがそういってくれただけで、ぼくは何かなぐさめられた気持ちになった。
ぼくはまだBには行かない、行けない。
でもいつか、必ず、BでAやCと再会する。
そのときまでは、日々の仕事がつづく、生活がつづく。