2010年12月6日月曜日

「樹木」展のために

展示のご挨拶として書いた文章です。


 地球の本質は鉱物の世界。そのごく薄い表皮の部分を菌類と植物が整え、動物たちが生きることのできる環境を作ってくれました。動物の生活は植物に全面的に依存しています。私たちヒトも森で始まり、森から草原や海岸や沙漠といったすべての風土へと進出してゆきました。

 もしも広い草原や沙漠にぽつんと一本の木が立っていたなら、きっとヒトの誰もがその木にむかって歩いてゆくことでしょう。大地と空をむすび宇宙をしめしてくれるのは樹木。すべての木は一本ごとに、その場で宇宙を開きます。

 木は空間を創設し、ヒトに食物と隠れ処を与え、年ごとに循環する生きるための時間を教えてくれます。葉や花や果実をつけ、家や舟や道具を作る素材となり、刻まれたときにさえ美を教えてくれます。燃やされれば熱を放ち、あるいはそこにあるだけで、ヒトと鳥獣や昆虫を近づけてくれます。

 その実質によって、姿によって、イメージによって、樹木と森はわれわれの心を作ってきました。今回の展示がふりかえろうとするのはヒトの進化史の全体にわたるそんな木の意味であり、しめそうと思うのは木に対する小さな感謝の気持ちです。ぜひ、のんびりしたひとときを、この小さな森で楽しんでいただければさいわいです。

 本展は明治大学大学院理工学研究科新領域創造専攻ディジタルコンテンツ系の学生を中心として企画・制作し、ゲストとしてアーティストの佐々木愛さん、写真家の兼田言子さんが参加しています。佐々木さん、兼田さん、ありがとうございました。

2010年12月5日
啓次郎