2009年11月28日土曜日

<群島-世界>、波打ち際で

今夜はシンポジウム「<群島-世界>波打ち際で」が開かれる予定。みんな島に集まりはじめていることでしょう。高良勉さんの紹介文を引用します。


群島論の可能性の交流へ
高良 勉(詩人・批評家)

 日本国家やアジア・世界と、どう向き合いどういう関係を構築するか。いま、大きな歴史の曲がり角で、一人一人に深く静かに問いかけられている。
 私は、学生時代からその問いをくり返し考え実践してきた。その過程で、新川明、川満信一、岡本恵徳らの「反復帰論」や島尾敏雄・ミホの「ヤポネシアと琉球弧」の思想に出会った。そして、「隔ての海を、結びの海へ」を合い言葉に琉球弧の住民運動や祭祀を巡礼してきた。とりわけ、現在は鹿児島県へ分割されてしまっている奄美群島への旅を重視してきた。
 そのような思索と祈りの旅の中で、今福龍太の大冊『群島—世界論』(岩波書店)を手にすることができた。この文化人類学者による文化・思想・世界論は、私(たち)をさらに新しいヴィジョンの地平へ誘ってくれる。
 今福の『群島—世界論』は、島尾が夢みながら充分に展開することができなかった「ヤポネシアを太平洋のネシア世界へ開放する」思想を、さらに世界規模で拡大している。
 今福は、海洋・群島から「大陸原理」へ向け反転する。すると、琉球弧や東アジア・太平洋・カリブ海・アイルランド群島等々の世界中の群島が、新たな可能性を帯びて浮上する。そこで琉球群島は、悪しき「日本対琉球」の閉鎖的回路から解放される。
 しかも、今福は海底の結びの力までヴィジョンを伸ばす。世界の海底に埋蔵されている死者たちの骨片の歴史や文化の智恵に耳を澄ます。私(たち)は、その海底の可能性によって「隔ての海」を乗り越える。
 そのような『群島—世界論』が出版されて一年余。私(たち)は、韓国、台湾、香港等からゲストを迎えて、群島の体験とヴィジョンの可能性についてヤンバル・奥区で議論し、交流する。アジアへ、世界への構想力を。
 なぜ、奥ヤンバルなのか。今福らは、この間「奄美自由大学」を主宰し、沖永良部島から奄美大島までの奄美群島巡礼し、私(たち)も参加してきた。そして、日本全国から芸術家や編集者、研究者をはじめとする錚々たるメンバー30人余が、今回は与論島から奥区へ巡礼して来る。
 言うまでもなく、与論・沖永良部と奥・辺戸とは、北山王国時代以前から歴史と文化において一つの群島地域を形成している。現在の、沖縄県と鹿児島県という人為的な「県境」は、日常に於いて越えられている。奄美自由大学の参加者は、それらの群島でどんなヴィジョンを視てきたのか。
 深まりゆく秋のヤンバル・奥区で、地元の方々に支えられながら、新しい「群島—世界」へ交流したいものだ。

◎11月28日(土)午後8時〜・民宿「海山木」
 「即興編:群島、揺れる」川満信一、おおしろ建、比嘉豊光、濱田康作、中村達哉、宮木朝子、高良 勉、奥区の歌と踊り、その他

◎11月29日(日)午後1時〜・奥区「集落センター」
 「シンポジウム篇:群島論のヴィジョン」
  パフォーマンス・島袋正敏(元名護市立図書館長)
  朱恵足(台湾中興大学)、川満信一、仲里効、イ・ヨンスク(社会言語学者)、グレッド・D(ミクロネシア島嶼文化研究)、デニッツア・G(香港城市大学)、高良 勉、今福龍太


奄美自由大学が、ついにヤンバルにまでつながって。2002年に始まった自由大学、ぼくは最初の2回に参加しましたが、それからなかなか都合が合わなくて残念。今年は大洞くんが参加しているので、また話を聞かせてくれることでしょう。