学部生たちと森に行きたいねという話をしていて、森と林のちがいが話題になった。四手井綱英『もりやはやし』という文庫本があって、たしかそのちがいがふれられていた。「もり」は「盛り上がった」という意味で「はやし」はお祭りの「お囃子」なんかとも関係する言葉、だとか。つまり、人為的に「はやした」もの。手元にないので、興味がある人は見てみてください。
それで改めて日本語の単語として考えてみると、たしかに「もり」とは「盛り上がる」ことでもあるだろうし(自然な丘陵地帯?)、地面そのものから樹木が自然成長してきたという感じもする。雨漏りなどの「もり」も、要するに水がおのずから溢れ出たということなのではないか。
満月を「望月」というときの「もち」もどこか関係してくるかもしれないし、だったらお餅もそうか(「望月」というと漢字に惑わされるけれど、たぶん最初の「もち」はお餅の「もち」に通じたものと考えるべきだろう)。モル、モツ。それでは手に持つときの「もつ」と日持ちがするというときの「もつ」にはどうつながるのか。そもそも「も」とは何だったのか。水藻の「も」と「萌える」と「燃える」(いずれも植物なり炎なりが出現することをさす?)は、どんな関係なんだろう。
一方、林は「はやす」から来て(「もやし」が動詞「もやす」から来るように)、人の手が加わって、それまで木々のなかった平地に樹木を育てたことがうかがえる。
北陸に住む友人が、昨日は森に行き薪を伐ったというのを、心底うらやましく思った。うちのあたりには森もない、林もない。市が指定した「保存樹」のいくつかに手をふれて、かろうじて樹木との対話を確保しているだけ。都市にはせめて林が必要。いまあるマンションの新築現場の何割かが林になるなら、ほんとうにいい町になる。
せめてちょっと詳しい地図を買ってきて、市内にマンションが立っているすべての土地を濃い緑の色鉛筆で塗り、市街地「はやし化」計画が進行したらどれくらいの面積が緑化されるかを、アナログにシミュレーションしてみようか。