Sunday, 5 August 2012

映画とフロッタージュ

8月4日〜8日まで、UPLINKでは「映画/千夜、一夜」と題する連続上映会が開催されます。

昨晩はその初日。2本のドキュメンタリー『槌音』(大久保愉伊、2011年、20分)と『わたしたちの間の徴』(宮岡秀行、2012年、66分)を見ました。

岩手県大槌町出身の監督が津波の後と以前の町を撮った前者は、広い海、降りしきる雪、昔の祭り、瓦礫のあいだの歩行などがつむぐ、しーんとした悲哀の時。後者ではフロッタージュの美術家・岡部昌生のアーティストとしての偉大さが、根室の飛行場跡に、広島の街路に、心の炎を灯していきます。フロッタージュだけでなく紙に土地の土を水で溶いて流してゆく「土の記憶」シリーズも壮絶。2007年にヴェネツィア・ビエンナーレでコミッショナーとして岡部さんの展示を準備した港千尋くんとの、岡部さんのアトリエ裏庭での対談シーンも、随時はさみこまれてゆきます。ロビーではこの日限りの、岡部さんの作品展示もありました。

上映後、岡部さんとぼくとの対談が予定されていたのですが、フランス行きの飛行機に乗れなかった港くんが急遽かけつけてくれて、3人の鼎談になりました。かなり充実した話になったのは、司会の藤井裕子さんのおかげ。ありがとうございました。

フロッタージュ。岡部さんの手が全身がとりくむ、その技法の射程と思想に打たれました。