2010年4月17日土曜日

書評! 大竹昭子「Portable」



そうすることができる人は、明日ただちに青山ブックセンター本店に行ってごらん。文学棚の一角に、大竹昭子さんのコーナーができている。そこに置かれたA5版4ページのペラリと薄い印刷物が、大竹昭子「ポータブル」。無くならないうちに、これを手に入れるべきだ。急げ!

もちろん無料配布。大竹さんの22冊におよぶ著作一覧があり、いまのところ最新刊である長編小説『ソキョートーキョー』にいたる道のりを大竹さん自身が語っている。はじまりは1979年のニューヨーク。ということは、1981年にぼくがはじめてニューヨークに行ったとき、大竹さんもそこにいたんだ。あ、あのとき、ミッドタウンの本屋で出たばかりだったソンタグのUnder the Sign of Saturn をぼくが立ち読みしてたら、チラリと鋭い視線を飛ばしてきた小柄な東洋人女性が、いまにして思えば大竹さんだったのかも!

ジャンルにとらわれず、端正な日本語の文章をつむぎだす大竹さんの背後にあるのは「本を書くことで人間全体を生きたい」という気持ち。彼女のどの本、どんな文章にもみなぎっている、その場をその時をその人を全面的に体験したいというあふれるような熱が、彼女の人生にこんな歩みと本の群れをもたらした。改めて、打たれる。その心の広大さ、真剣さに。

そして写真と対話が、ずっと彼女の旅に並行して走る線路のようにあったことに、深く納得する。なぜなら、どちらもまさに「場」だけが生む何か。場を記憶に刻みこむ何かなのだから。

こうした小さな配布物、ぼくも考えてました。ぼく自身のすべての本とすべての翻訳についてのコメントを添えて。ま、いつかやります。お楽しみに。

それにしても青山ブックセンターの最近の展開はすごいよ。きょうは韓国人の若者のグループが、デザインや写真のコーナーを、真剣に議論しながら見入っていた。なるほど、韓国や台湾、中国からの、尖鋭な若者たちの旅の目的地になるのは、ぜんぜん変じゃない。東京のABCではない、すでに東アジアの代表的書店のひとつになっている。

これからも心のふるさとであってほしいABC。