Sunday, 12 October 2014

「妃」16号

田中庸介編集の詩誌「妃」の16号が出版されました! 力作ぞろいです。ぼくは「移住論」という160行ほどの作品を発表しました。

庸介さんや長谷部浩嗣さんらの世代を中心に、30代から50代以上までずいぶん年齢幅のある、多彩な顔ぶれ。このあいだ札幌で一緒にジンギスカンを食べた歌人・山田航も、初の自由詩に挑戦しています。

不思議なもので、なぜか旅と家族に主題が収斂していきました。予め決めた主題ではなく、こうして事後的に見出されるのが、真の主題。

12月に、朗読会を企画しています。詳細はまた。どこかで、ぜひ手に入れてください!

リトアニアから戻って

リトアニアへの旅から戻りました。

首都のヴィルニウスで2回、詩祭のメイン会場だったドルスキニンカイで1回の朗読。各国の詩人たちとの出会いにも(ここでも)恵まれ、非常に充実した日々でした。

ドルスキニンカイは川と湖に彩られた美しい町。サナトリアムとリゾートが点在し、日本でいえば軽井沢みたいな場所なのでしょうか。

さすがの北国、すでに本格的な秋で、朝など気温は7度くらい。毎日降りしきる落葉が、否応なく世界の無情を教えてくれます。

しかしリトアニア、すばらしい国でした。インド=ヨーロッパ祖語研究にリトアニア語が鍵を握るのは、よく知られた事実。ソシュールも真剣に勉強していたし、比較言語学者にはギリシャ、ラテン、サンスクリットといった古典語と並んで必須の言語です。

同時にここは、ソ連とナチス・ドイツに徹底的に蹂躙された地域。第2次大戦終結前後に30万人のリトアニア人が虐殺されたといいますが、うち5万6000人ほどは、ナチス時代にリトアニア人によって殺されたユダヤ系住民。

ヨーロッパのこの血なまぐさい歴史、そしてその歴史を忘れず正確に語り継ごうとする努力を思うと、現在の日本で猖獗をきわめる歴史修正主義の愚かさに、やりきれない気がします。

詩作についても多くの示唆を得ました。今後少しずつ、その啓示を生かしていきたいと思っています。将来ぜひまた再訪したい地域です。

Thursday, 2 October 2014

リトアニアにて

リトアニアの国際詩祭「ドルスキニンカイ詩の秋2014」に招待され、リトアニアにやってきました。リトアニア語といえばインド=ヨーロッパ祖語研究の鍵をにぎる言語。映像作家ヨナス・メカスの母国であり、ぼくがもっとも好きな哲学者アルフォンソ・リンギスの父祖の土地(リンギス自身はアメリカの移民2世)でもあります。

早速、昨日、首都ヴィルニウスの書店 Mint Vinetu での朗読会に参加しました。「非在の波」連作から、日本語原文を朗読。用意されたリトアニア語訳を、同席したディレクターが読んでくれました。

きょうは移動日。森の町にむかいます。

「毎日新聞」9月29日夕刊

「毎日新聞』9月29日の夕刊にエッセー「歴史を喚起する詩の冒険へ」が掲載されました(タイトルは文化部による)。

先日の北海道での岡部昌生さんとのトーク(札幌、奔別)を受けて、詩の主題としての産業(いい例が新井高子『ベットと織機』、和合亮一『廃炉詩篇』)についての予感を記したものです。ぜひごらんください。

現代詩が歴史、産業、社会にとりくむべき時がはっきりと来たと思っています。さて、自分には何が書けるか。これから、ふらふらと考えていきます。

Monday, 15 September 2014

秋の北海道で

ぼくがもっとも尊敬する現代美術家のひとりである岡部昌生さんとの、二つのトーク・イベントにお招きいただきました(福島県立博物館を中心とする「はま・なか・あいづ文化連携プロジェクト2014」の一環です)。

13日(土)は大通り公園のはずれにある瀟洒な札幌市資料館での「札幌で語る<近代>」。佐藤友哉さん(札幌芸術の森美術館長)および岡部さん、港千尋さんとぼく。フロッタージュによる歴史記述者である岡部さんのお仕事を出発点として、近代という枠組のはじまりと終わりについての、大変に刺激的なディスカッションになりました。

14日(日)は「北海道・福島/炭鉱・アート」が主題。まず、その会場に打たれました。三笠市にある旧住友奔別(ぽんべつ)炭鉱。廃され赤く錆びた姿をさらす縦坑のやぐらを見学したあと、石炭積出ホッパーと呼ばれる巨大な建物の廃墟に展示された岡部さんの100メートルにおよぶ作品を前にしてのイベント。渡邊晃一さん(美術家、福島大学教授)と岡部さんの対話ののち、吉岡宏高さん(炭鉱の記憶推進事業団理事長)のきわめて的確なこの場所をめぐるお話をうかがい、さらに港くんとぼくが加わって、エネルギーと近代、福島と北海道をめぐる話を発展させていきました。

すでに秋の北海道が、その土地が、いろいろな考えを強いてきます。近現代という時代の非情さとさびしさの影にあるものを探りながら、ヒトとその技術がはらむ問題、ヒトという種と他の生命たちの関係を、これからも言葉にしなくてはなりません。

次は11月の「動物のいのち」シンポジウム。




Tuesday, 9 September 2014

『ちくま新書ブックガイド』

ちくま新書の創刊20周年を記念するブックガイドが発行されました。この新書の中から「印象に残る1冊」を116人の人たちが選んでいます。

ぼくは服部文祥さんの『サバイバル! 人はズルなしで生きられるのか』を選びました。

おもしろいもので、どの本を選びどのように紹介するかで、選者の人柄などもなんとなくわかってきます。読みたくなる本がたくさんあって困りますが、特にいまの興味からいってすぐにでも読みたいのは

山下祐介『東北発の震災論』(選者は鎌仲ひとみさん)
山下祐介『限界集落の真実』(山内明美さん)
松戸清裕『ソ連史』(黒田龍之助さん)
国分良成『中華人民共和国』(塩沢英一さん)

あたりでしょうか。評の中では、中条省平さんの『<狐>が選んだ入門書』評が、とりわけ心に残りました。

ともあれ、大変に刺激的ないい小冊子ですので、今後書店で見かけたらぜひもらっておくことをお勧めします!「定価0円」です。あの知る人ぞ知る、知らない人はまったく知らない、高品質リトル・マガジン『北と南』の編集長・河内卓の仕事みたいです。


Saturday, 6 September 2014

『三角みづ紀詩集』

思潮社・現代詩文庫206として『三角みづ紀詩集』が刊行されました。ぼくは福間健二、池井昌樹、野口あや子のみなさんとともに、解説エッセーを寄稿しています。

この刊行を待つ間に、みづ紀さんの昨年の詩集『隣人のいない部屋』が萩原朔太郎賞を受賞したとの発表がありました。おめでとうございます! それはまさに詩人・三角みづ紀の最大の転回点を記す詩集。その現在地を視野に入れて、現代詩文庫も、お読みください。

ぼくのエッセーは「スロヴェニア作用」と題されています。静岡、スロヴェニア、小さな旅を彼女と共有し、彼女の変貌をまのあたりにすることができたのは、ぼくの大きな幸運でした。