さくらはそんなに好きじゃない、花としては。ましてやさくらの中でも、もっともポピュラーなソメイヨシノは。
と春には思って冷淡な気持ちでいるけれど、東京ならまさにいま、色づいて落ちてゆく葉をおびただしく用意したソメイヨシノの美しさには、陶然とします。
桜並木を歩いて、落ちた葉っぱを見てごらん。黄色と赤のあらゆる色合いが入り交じって。枯れて。酸化して。恐るべき美しさ。
これからすべての葉っぱが落ちて、4ヶ月後にはまたあの白い花の狂気が。乱舞が。なんという気前のよさ。ありがとう、ソメイヨシノ。秋の落葉から教訓を読み取る必要はないけれど、この完璧な色合いを記憶に留めないのはあまりにもったいないことです。