Thursday, 18 October 2012

田中功起プロジェクト

来年のヴェネツィア・ビエンナーレの日本代表作家は、田中功起さん。彼がロスアンジェルスに移る前(2008年だったかな?)われわれディジタルコンテンツ系でレクチャーをお願いしたこともありました。

その田中さんのヴェネツィア用プロジェクトのひとつに、ぼくも参加。5人の詩人の共同制作プロセスの全体がヴィデオに収録され、これから映像作品へと制作されていきます。

月曜日の共同制作に参加したのは、三角みづ紀さん、柏木麻里さん、斉藤倫さん、橘上さん、そしてぼく。作業の一部として、5人で1行ずつ書き進んだ作品を以下に。

なんとも不思議な、楽しい経験でした! 来年はヴェネツィアへ行くぞ。

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水を飲んだ、別に水だから飲んだわけじゃないけど
なんてちょっといいすぎたかもしれないな
わたしたちは円になっているだけで
惑星同士のような引力にとらわれてしまう
砂と水を見分けろ。
砂がわたしにそう言ったわけじゃないけど
あきらかな感覚です。
たとえば、窓のむこうだよ
けんけんぱであんなとこまで行けるんだ
四谷四丁目東と月面が近接する
1987年12月19日にやったけんけんぱと月面が近接する
月に氷はないのになぜあんなに輝くの
垂直な月光が私を立たせる
そのあしのうらにかくれていた半分のもの
残欠と残欠が教えてくれる瞬間
月光という出来事
引かれあうのではない引力をさがして円になる動物
獣としての私は水を飲み砂に眠る
この夜。
獣にだって影はあるよ。夜にだって影は出る
夜の水と影の光に裏切られては
四谷四丁目東と月面が近接する
この夜。
砂漠を流れる水と中庭の噴水から噴き出す砂
水に許される日まで水を飲み続けよう。