Thursday 21 February 2008

アニー・リーボヴィッツ

ドキュメンタリー『アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生』を見てきた。あまりのすばらしさに、まるで瞳孔が開くような気がした。

彼女の写真は、70年代の雑誌「ローリングストーン」の表紙以来よく知っている。晩年のスーザン・ソンタグの恋人だということも、もちろん知っていた。でも「ヴァニティ・フェア」での仕事は、日頃ぜんぜん見ない雑誌でもあり、特に注目してもこなかった。写真集Women(2000)はずっと手元にもっていたけれど。

彼女の妹が監督したこのドキュメンタリーは圧巻だった。一種のホーム・ムーヴィーなので、時間の幅とか、そこにみなぎるintimacy がすごい。その燃えるような仕事ぶり、あくまでもストレートな人柄、妥協のない意志、すべてがはっきり伝わってくる。

空軍勤務の父親に連れられて引っ越しをくりかえした一家の、車の窓というフレームからの風景が彼女の原点なのだという。実際、彼女の仕事には(1)家族写真(2)ロバート・フランク的なアメリカのスナップ(3)アヴェドン流の肖像写真(4)その発展としてのほとんど映画の撮影現場を思わせる演出によるポートレート、といったスレッドがはっきりわかる。これに、このドキュメンタリーには出てこないが、自然そのものを主題とした作品が加わる。すさまじい力量だ。

言葉の人ソンタグとイメージの人リーボヴィッツの相補的な関係は、いかに強烈なものだったか。異性愛では生じないような完璧な一致の感覚が、そこにはあったような感じがする。世紀のカップルといっていいだろう。

そして改めて思うのが、「ユダヤ系」という存在のあり方。フランク、アヴェドン、ソンタグ、リーボヴィッツ。その構想力の大きさ、精神の強さが、たとえユダヤ教から完全に離れている場合でも、ある種の共有される心の姿勢として残っていないとは思えない。

とにかくすばらしい作品。ぜひ見てほしい、打ちのめされてほしい!

ちょうどきょう、注文していた彼女の写真集Annie Leibovitz: A Photographer's Life 1990-2005が届いた。今夜はこれから、これをじっくり見ることにする。