Wednesday, 30 April 2008

スキル・アップ、キャッシュ・バック、タックス・イン

ぼくの商売は英語教師。すると困ったことに、困った日本語が、このごろあまりに目につく。「スキル・アップ、キャッシュ・バック、タックス・イン」。これはぜんぶ日本語。日本語に対応させた英語の単語を借りてきて、勝手にくっつけたもの。こうした造語がここまで通用しているとは、驚きだ。

別に日本語だと思っているから、それで意味が通じればいいようなものだが、学生の作文の中にそうした表現が使われると、さすがに直さない訳にはいかない。いちどは、こうして言語警察を演じることになる。ああ、いやだ。でもほっとくと、かれらはそれをふたたび英語綴りにすればそのまま英語として通用すると思いこむから困る。絶対に通じないよ。

一方で、ぼくはむかしからピジン言語礼賛の立場をとってきた。単語ごとの置き換えは、ピジン言語創出のメカニズムの基本。それ自体は、むしろ、どんどんやっていいと思う。ところが「言語教育」は必ず規範を教えるし、その規範とはその言語の「ネイティヴ」に対する通用範囲をひろげるということだし、また言語自体の「美」的水準を考えないわけにもいかない。

何が美しく美しくないかなんて、よくわかりもしないし、どんどん変わっていいものだが、その都度の判断としては「こっちのほうがいい、美しい」ということをしめさなくてはならない。

さあ、困った。でもさしあたっては、自分では絶対に使わない、こういう表現は。そして学生が作文で使ったら、これからもたぶん直す、直させると思う。

そしてさらに思う、こうしたことだって結局は「詩」の問題じゃないか? ある言葉をある場面や文脈で使う使わないの判断をつきつめていったものが詩なんじゃないか? 詩が実用性と離れたところにあるなんて、誰がいった?

川上未映子さん

大阪のブックファースト梅田店で開催中の「川上未映子の本棚」を構成する20冊のうちに、『わがままなやつら』も選ばれている。

川上さんのホームページ「純粋悲性批判」から。

http://www.mieko.jp/

「現代の樋口一葉」とも呼ばれはじめた川上さんだが、富岡多恵子以後最大の関西出身女性作家であることはまちがいないし、その恐るべき言語感覚は、少しでもふれるたびに大きな歓びを与えてくれる。だって「純粋悲性批判」だよ。他の誰が考えつく、考えついた?

川上さんの芥川賞と桜庭さんの直木賞が重なった今年は、日本文学史上、近年例を見ない重要な年として記憶されることになるだろう。その彼女たち二人がエイミーを真剣に読んでくれたと思うと、ほんとうにうれしい。

ちょっとまえ、朝日新聞に4回くらいに分けて連載されていた川上さんのおかあさまの談話が、またよかった。

Tuesday, 29 April 2008

『わがままなやつら』書評、さらに

「週刊金曜日」4月18日号に陣野俊史さんが、「日本経済新聞」4月27日(つまり昨日)に桜庭一樹さんが、すばらしい書評を書いてくれた。

「批評にはお礼をいわない」(お互いに必要があれば自由に批判できるよう)という原則にしたがって、お礼はいわないけど、大変に勇気づけられました。

原著者エイミーに、書評の内容をきちんと伝えてあげなくちゃ。

北島敬三「Portraits 1992-2007」

新宿にひさびさに行き、Photographers' Galleryで北島敬三さんの写真展を見てきた。展示されているのは二人の男性のポートレート。経年的に、ほぼ毎年一枚の肖像写真が並べられ、かれらの風貌の変化をあますところなく見せてくれる。

写真。時の芸術。人生の証言者。真実を暴露するもの。

北島さんの持続力もすごいが、この被写体になることを承諾してくれた人たちの精神もすごい。もはや、何も隠せない。すべてがあらわになっている。それはヌードどころじゃない。おそろしいまでの露出だ。

北島さんには今年度後期から、DC系で写真論の授業を担当していただく。みんなには現役の第一線の写真家の迫力に、この機会に間近にふれてほしい。

『声とギター』ついに!

以前お知らせした港大尋の新作CD『声とギター』がついに完成し、きょう新宿でもらってきた。これはいい! ライブツアーのチラシにある言葉を引用しよう。

「シリアスだがユーモラス。チンピラだが癒し系。ボサノヴァみたいでブルースで、島唄っぽいけど、どこかアフリカ。意表を突いた言葉遊びと、隠しきれないロマンティック。愉快な仲間たちとともに、はじけます、うたいます!」

そして今週金曜日、神楽坂でのツアー初日、ぼくも演奏後のトークショーのために舞台に上がります。ぜひ! 都合のつく人は来てください。

他のメンバーはギターの沢和幸さん、スライド・ギターのTeerさん。レコーディングに参加のShanti Snyderさんはざんねんながらツアーには参加できない模様。でもそんなことはなんでもない。

日程は以下のとおり。

5月2日  シアターイワト(東京・神楽坂)
5月6日  ガットネロ(大阪・上本町)
5月7日  ココルーム(大阪・新今宮)
5月8日  フチューロ(大阪・北堀江)
5月9日  カフェ・パルル(名古屋・新栄)
5月10日 ライフタイム(静岡)
5月17日 中国茶芸館Blue-T(東京・下高井戸)

購入その他のお問い合わせは
http://homepage3.nifty.com/siam-oikos/
まで。

ぜひ、聴きにきてください。

Monday, 28 April 2008

新聞から

新聞からの話題、ふたつ。

「朝日」の土曜日のBeにおもしろい写真があった。谷川岳の山開き。これから登山しようとする人たちが数人かたまっている。そばには達筆な毛筆で、以下の文字。「登山の方に鳩を貸します 無料 但し箱代 三十円 財団法人日本鳩通信協会」。

遭難した場合の連絡のために、鳩を持って登山する! これは1958年の写真だという。思ってもみなかった話で、非常に興味深い。朝日新聞社では、1966年まで鳩を通信用に飼育していたのだそうだ。ぼくの子供時代も、まだ年上のいとこたちが鳩を飼っていた。はたして通信に成功したのかどうかは、知らないけれど。

もうひとつは日曜の「読売」。「日本の知力」という連載記事によると、ハーバード大学では親の年収が6万ドル未満だと学費が免除されるのだという。同大学の学費は、年間およそ5万ドル、大部分の家庭に、払える額ではない。でもたぶん大学院レベルではほとんど全員になんらかのかたちの奨学金や授業料免除が出るはずで、そのへんのシステムは日本ではぜんぜんありえない作り方。

先日、スタンフォード大学の博士課程に入るという知人が、下見に招待されて行ってきた。優秀な大学院生はいくつもの学校から入学許可をもらうことが多いので、その先は大学同士による取り合いになる。それで各大学は旅費・宿泊費つきで入学候補者をキャンパスの下見に招待する。さあ、見てくれ、選んでくれ、ということだろう。これは知っていたが、太平洋をわたる旅費まで出してくれるとは、さすがに驚いた。

日本の大学にとって、緊急課題のひとつは奨学金制度の整備。特に大学院生、留学生に対する授業料全額免除や、TA、RAなどによる給与支払を確立しなければ、どんなにやる気と能力があってもとても通えない人は多いと思う。すると困ったことに、大学という制度自体がどんどん階級再生産の場となって、社会そのものについても考えずにすませる部分が肥大してゆく。

大学院生のみんなが、バイトで忙しいのはよくわかる。疲れて勉強する時間もなくなるだろう。それでは本末転倒だが、逃れがたいことでもある。いろいろ工夫していきたいが、どう進めればいいのやら。

まずは小刻みに、あらゆる機会をとらえて、発想の種となるような知識を身につけてほしい。役に立たない知識、ムダになり失われるものなんて、何もない。20代前半のあいだに、思い切り、むりやりにでも、思考の地平をひろげておいてほしい。

Sunday, 27 April 2008

アフリカ文庫講演会

明治大学図書館アフリカ文庫では、5月1日に、以下の講演会を開催します。

駿河台の明治大学中央図書館にて。講演者は元コンゴ民主共和国政府和平委員会顧問、エル・ハジ・ムボッチさん。アフリカの紛争の要因と解決策、アフリカでの紛争解決にむけてのAU(アフリカ連合)の政策などについてお話しいただきます。

1 日時  2008年5月1日(木) 
  午後2時00分開場 
  午後2時30分開演(午後4時00分終了予定)
2 場所  多目的ホール(明治大学中央図書館地下1階) 
3 テーマ  「アフリカが直面する課題」
4 講演者 エル・ハジ・ムボッチ氏  
(セネガル・ダカール シェイク アンタ ディオプ大学教授、
 元コンゴ民主共和国政府和平委員会顧問) 
www.elhadjmbodj.com

※ 講演は仏語、日本語通訳あり
 入場無料

アフリカに関心のある方は、ぜひご参加ください。(ぼくは授業日なので行けず、ざんねん。)