Friday 17 May 2019

シカゴ大学で

シカゴ大学での滞在を終えて、帰国しました。From Local to Global in East Asian Culture というシンポジウムに出席するのが主な目的。以下のスケジュールでした。

まず13日(月)午前に晴美ローリー先生の日本語3年生のクラス訪問。あらかじめ読んでおいてもらったぼくの作品やインタビューについて、それぞれふたりが質問を準備してあり、それに答えるという形式ですが、8人の学生(大学院生主体)の気合いの入った準備のおかげで、大変に楽しく質疑応答をこなすことができました。たぶんかれらにも、いろいろな発見をしてもらうことができたと思います。みんな専門は人類学、美術史、歴史、コンピュータサイエンスなどと多岐にわたっていますが、3年めが終わる段階でここまで日本語力がついていることに感動。さすがシカゴ大学。

それから夕方になり、大学近くのSeminary Co-op Bookstoreというすばらしい書店で自作朗読をしました。まず、ぼくが詩を読み、ついで同行した小説家の木村友祐さんが『聖地Cs』『イサの氾濫』から抜粋を読みました。友祐さんのこの作品は、ぼくの古くからの友人Doug Slaymaker による英訳が出版されたばかりで、この英訳はシカゴ大学が出す翻訳賞に選ばれたばかり。このお祝いも兼ねてのイベントになりました。ダグが解説とともに英訳を読み、それから友祐さんの魂のこもった声が響きました。

ところでこの書店は最高の品揃え。1週間通ってもまったく飽きない感じ。全米でも最高クラスではないでしょうか。いずれは本を買うためだけに、ここに来てみたい。

ついで14日(火)は一日がかりのシンポジウム。午前、午後ともふたりの発表とそれに対するひとりの充実したコメント、ついで質疑応答というフォーマットで進行しました。いずれ詳述しようと思いますが、沖縄、台湾、中国、イスラエル、日本の東北、済州島、キューバとプエルトリコといった土地での問題が思っても見なかったかたちでむすびつく、非常に凝縮度の高いシンポジウムになりました。Michael Bourdaghsさんの構想力のおかげです。ありがとうございました!

以上の議論が終わったあと、ぼくの基調講演。On The Glory of an Unknown Literary Prize というタイトルで、われわれのプロジェクト型文学賞「鉄犬ヘテロトピア文学賞」についての報告を、約1時間にわたって行いました。この賞にわれわれがどんな意味をこめているのか、受賞していただいた作品の「並び」が、どんな新しいヴィジョンにつながるのか。そういったことです。

これを話しながら、2013年以来、この賞につながるさまざまな活動をともにしてきたみなさんの顔と存在をひとりずつ思い浮かべ、ひそかに強い感動を覚えていました。

今年、第6回目の選考が進行中です。夏には受賞者が決まります。日本と日本語を根本から考え直すための手がかりをもらえるような、そんな作品がまた現われてくれるのを待望しています。みなさんも、ご期待ください!